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特撮最前線  超特撮論  四、自我と倫理  ②



 ここで改めて問うべきなのは、その丈茂の根本動機は、果たして倫理的なものであったか否か、ということである。この動機は「友人の復讐」となっているが、その友人はどんな状況で殺されたのか。またどんな人物だったのか。そして茂にとって、どんな意味を持つ友人だったのか。
 はっきり言って、その詳細は不明--というより、むしろ二次的なものとして扱われている。茂がその友人への友情、「想い」を口にする話もないし、またその友人が素晴らしい人物だったと仮定して、そのような素晴らしい人物を利己的な目的のために殺害するブラックサタンの「悪」に、怒りを真剣に向けたこともない。

 これはこの「ストロンガー」が、「X」までメインを務めていた伊上勝から村上庄三、鈴木生朗といった人達に脚本家が交替したことが大きく係わっていると思われる。単純に言えば「ストロンガー」は、それまでの「仮面ライダー」とは違い、「伊上作品」ではない。
 伊上氏の脚本には、「ダブル」の主題を「互いの境遇」に転換する契機が持つ倫理的な主題があり、悪の組織的犯罪の社会的被害を公共の倫理感から怒る主人公達が明確に描かれていた。つまり「他人を想いやる」心と、「人類の平和」に対する高い正義感が、そこには確固として存在したのである。

 しかし茂にはその「友人」を想いやる描写もなければ、「高い正義感」を感じさせるだけの真剣な言葉も見当らない。つまり茂の根本動機は、本質的に「倫理的」なものではないのである。では、何か。それは「超絶的」なものとしての「自我」の発露、というように言えるだう。
 藤兵衛とタックル(岬ユリ子)がブラックサタン編の最終間際、ブラックサタンにさらわれる。しかしその時茂は、ブラックサタンから送られた宣戦布告状を読んで、二人の心配をするのではなく「ブラックサタンのアジトを突き止めるチャンスだ」と考える。些細なことだが、実際に描かれたこのような丈茂というキャラクターが、「ストロンガー」という存在の本質を決定する。

 また「デルザー軍団編」では、デルザー軍団の当面の目的は「ストロンガーを倒すこと」であって、「世界(日本)を征服すること」では全くない。物語の主筋は「ストロンガーを倒した者が、デルザー軍団のリーダーになる」という設定のもとに、悪の軍団の内部抗争を絡めつつ描かれる。
 ここではそれまでの「仮面ライダー」の存在意義であった、「悪の計画を阻止すること」や「子供の未来を救うこと」が全く描かれない。悪は互いの思惑に任せて「ストロンガー」に単に悪意を持つ者にすぎないし、また物語には子供が登場する余地が全くない。登場してもそれは申し訳程度に誘拐されるに過ぎず、何かの計画のためにさらわれたのではない。またストロンガーも、いつも通りに人質を救うだけである。

 「ストロンガー」は悪の計画を阻止するのではなく、単に自らにふりかかる火の粉を払っているにすぎないし、また子供という特権的な存在との信頼確立を成し遂げたわけでもない。ここではストロンガーを「正義の味方」と定義づける能動的な要素が、ほとんど見当らないのである。
 「ストロンガー」という存在は「正義(子供)を守っている」のではなく、単に「戦っている」にすぎない存在と見做す以外にない。茂が「ストロンガー」になったのは、単純な話「正義を守る」ためではなく、単に「戦いたいから」と受け取ることができる。「自ら」改造されるという行為は、その好戦的な性格を暗に物語っている。

 「ストロンガー」の好戦的性格は、脚本家の資質であると同時に、「ストロンガー」という存在それ自体が次第にそのような存在へと自らを彫塑していった形跡が強い。
 それは荒木茂の演技に依るところもあるし、また「電気人間」という特殊な設定がもたらした部分もある。作品は一人歩きし、そして自らの本質を開花することがあるとだけしておこう。実際、「ストロンガー」は伊上氏が書いても好戦的である。

 デルザー軍団編でオオカミ長官が登場した時、ストロンガーは反目しあうゼネラルシャドウとオオカミ長官との間に内紛を見て、「この機に乗じて、一気に奴等を叩き潰すか」と考える。このような好戦的性格は、それまでの「仮面ライダー」達には存在しない。
 またデルザー軍団編でのメインライターとなった鈴木氏の書いた回では、冒頭でストロンガーは「デルザー軍団のアジトを捜し」ている。そこには「悪の計画」があってそれを阻止するという、後手後手に回るそれまでのライダー達とは異なる性格が描写されている。それは自ら「戦いを求める」ヒーローの姿なのである。

 「ヒーロー」は「正義」であるからこそ、「ヒーロー」なのである。それは災害から人々を守り、悪と戦う「倫理性」によって「ヒーロー」なのである。しかしその実特撮作品には、「倫理」的目的以上に「戦い」そのものによるカタルシス--「戦い」それ自体を嗜好する潜在的欲望が強く作用している。
 それは特撮の根本動機が「正義」ではなく、ある意味では格闘技のように「戦い」それ自体を見たいことにあるということだ。無論、特撮とはそれだけではない。しかしシチュエーションドラマをモチーフにした「ウルトラマン」に対して、時代劇を原モチーフに持った「仮面ライダー」は、遥かに「戦い」それ自体を嗜好する傾向が強い。

 「悪の計画」が全く存在せず、「ストロンガー対悪の軍団」をひたすら描写するデルザー軍団編は、その隠れた動機を全面的に開示した問題作なのである。つまり『ストロンガー』は、その主役の性格造形、そして物語の展開において潜在意識を全面的に解放した作品であるということができるのである。
 ここで「ダブル」を殺した後のもう一人、という主題が再び取り上げられる。一人がもう一人の「ダブル」を殺すということは、つまり「ダブル」という相対化を拒んで自らを「超絶者」にするという潜在的欲望が解放されたことを意味している。

 その意味で「ストロンガー」の戦う動機は「家族」という自らの属していた共同体が破壊されたことに対する怒りではなく、「友人」という「ダブル」が殺されたことが契機とならなければならない。これから考えるならば、ストロンガーは友人が殺された「復讐」に立ち上がったのではなく、むしろ友人が殺されたことによって「解放」されたのである。
 その意味では、むしろ「友人」を殺したのは他ならぬ「ストロンガー」本人であるということすら結論できるのだ。仮にそれがブラックサタンのしたことであったとしても、それはストロンガーの潜在意識に欲望として存在した事態であり、ブラックサタンは単にストロンガーの欲望を代行したにすぎないからだ。

 この意味でストロンガーは友人=ダブルを殺すことにより、自らを相対化し、抑圧し、制御する鎖から解き放たれ、その戦いそれ自体を嗜好する潜在意識--その「自我」を全面的に開花させるのである。
 つまり「ストロンガー」の目的とは、他ならぬ「自我の発露」という根本動機に狩りたててられていることが理解できるのである。

 このような「自我の発露」が即ち、「超絶者」を指向するという意味なのだが、そのような衝動に対しては当然、制御やそれより上位のものがあってはならない。そのような理由から、ストロンガーに超電子ダイナモを装着したマサキ博士があっという間に死んでしまう事情が理解である。
 ストロンガーは最初の「電気人間」に改造される際にですら、「改造する側」の意志を無視して脱走した実績があり、その後のパワーアップに対してなされた改造においても「協力者」という形で自らを拘束する者があってはならない。

 改造者は被改造者に対して、その肉体におけるより優位な理解を有しているが、それは被改造者にとっては「自分」よりも「上位」の存在を認めることとなる。しかし「超絶者」であるストロンガーには、それは存在してはならない。
 マサキ博士が超電子ダイナモの能力説明だけして殺されるのは、そのようなストロンガーの潜在的願望に即している。つまり欲望の次元から見るならば、博士もまたストロンガーが殺したといっても、ほとんど差し支えがないのである。

 無論、それまでも改造者は多くの場合、死んでいる。しかし本郷を改造した緑川博士の死は、むしろ悪に加担し本郷の運命を狂わせた「悪」の行為に対する因果応報として「天の裁き」が下った、というほうがはるかに事態にふさわしい。
 マサキ博士の場合は悪に加担するのが嫌で脱出し、悪と戦うために超電子ダイナモの開発をしていたのであるから、「因果応報説」は当て填まらない。またXの神敬介やアマゾンの場合、改造者は実の父あるいは父親同然の長老であって、その悪と戦っての死は「遺志の伝承」を意味しているのである。

 しかし茂とマサキ博士はほとんど初対面であり、とても「遺志の伝承」が行われるような深い関係ではない。このようなことからも、マサキ博士による改造とその死は「ストロンガー」の潜在願望にのみ即しているのであり、それ以外の原理には全く適合していないことが理解できる。
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