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作品を読む  『超時空要塞マクロス』  ②リン・ミンメイ



 『超時空要塞マクロス』という作品を決定づけているのは、個人的には「バルキリー」でも「マクロス」それ自体でもないと思っている。では、何が『マクロス』の決定的要素なのか? と訊かれれば、それは「リン・ミンメイである!」と僕は答えるだろう。

 巨大ロボットが戦争する、という作品は他にもある。しかし「リン・ミンメイ」は『マクロス』にしか出ないのだ。ではその、「リン・ミンメイ」とはどんな存在であるというのか? 
 リン・ミンメイはアイドルである。この美少女=ちょっワガママなアイドルが、しがない戦闘機乗りの主役とイイ感じになる、というどこまでもバカバカしいファンタジックなラブコメ路線こそが「マクロス」を、『マクロス』たらしめる本質なのである。

 しかしこれは昨今の、リアリティ無視の萌えキャラ押しアニメと違い、あくまで「そんな事もあるかもしれない」という範疇でやるのがポイントである。言ってみれば前線の兵士の慰問コンサートに来たマリリン・モンローが、うっかりそのなかの兵士の一人と恋に落ちた…というような。そんなファンタジーがそこにはある。
 しかしマリリン・モンローみたいな「トラックドライバーがすぐにベッドインしたくなる女の子」ではなく、いかにも「80年代アイドル」なところが『マクロス』なのである。そこに「リン・ミンメイ」の醍醐味がある。

 このリン・ミンメイを描いたのはキャラクターデザインの美樹本晴彦である。美樹本のキャラクターは、それまでの「役割」としてのキャラデザ、という一般的なキャラ理解から、突出した「美少女人気」を出したという点を特筆してもいいと思う。
 当時、リン・ミンメイの「キャハッ!」というアクションが問題になった。両手でグーを作り、胸の前で合せて笑うアクションである。あるいは開けた口の前でパーを作り、「ウッソーっ!」という所作。

 こういうミンメイの「芝居」に対して、「やりすぎ」「ブリっ子すぎ」「リアルじゃない」などという意見がアニメファンの間で物議された。しかしその声に対して美樹本晴彦は、「女の子というのはよく観察すれば、無意識的にああいう行動をとってるものんあです」と書いたことがある。ミンメイの「ブリっ子」芝居は、実は観察に基づくものだった。
 興味深いのはミンメイというのは、キャラ案の段階で明確に意識された「ブリっ子」であり、あえて「見え透いてても自分を可愛く見せようとする女の子」が目指されたという点である。これは女性ファンの反感を買うことを予想してなお、あえて「嫌われても」ブリっ子のヒロインを出そうという試みだった。

 もう既に「ブリっ子」という言葉は死語だろうが、80年代のアイドルにはこの「ブリっ子」というのは重要なイメージ戦略であった。あくまで清潔で可愛く、それでいてちょっと小悪魔的に。ミンメイというのはそういうキャラクターであり、また作品内でもそういうキャラクターでアイドルとして成功していくという設定となっていた。
 そのこだわりは例えば、美樹本晴彦の「パンチラ修正」などにもそのこだわりが見られる。これは空中に投げ出されたミンメイを、主人公がバルキリーの手で空中キャッチしようとするシーンで展開された。

 元の原画を描いた板野一郎版では、ミンメイのスカートは空中落下のためにめくり上がり、パンツは完全にマルミエの状態であった。しかしその原画を見た美樹本晴彦は、全部の原画を描き直しを決行した。それは空中落下のためにスカートを翻しながらも、ほんの一瞬もパンティを出さない「清純」ヒロインの牙城を守ったのであった。
 この美樹本のミンメイに対するこだわりは非常に強いものだった。作品の元となるイメージボードというものがあるが、それには「中華料理屋の看板娘」であるミンメイの、細部にわたるキャラ設定が描きこまれていて、これは本編には使われなかったものも含まれている。

 この80年代的なアイドル、リン・ミンメイと、主役がちょっとイイ仲になる。この主役の方は、ほとんどイメージボードなんか存在しない。この「アイドルと恋に落ちる」というのが、いかにも「派手で」「明るく」「楽しい」80年代を象徴する幻想なのである。
 そしてこの『マクロス』という作品は、このリンメイが歌う「歌」…というより、ミンメイが象徴する80年代ポップカルチャーが、「戦争を止める」という作品なのである。それは言ってみれば、「真面目な70年代以前」が、「楽しい80年代」にとって変わられる物語なのである。

 しかし実を言うと、僕が好きだったのは最終的に主人公とくっつく、「おばさん」とか散々言われてた早瀬美沙の方。これは美樹本晴彦の画集を見たとき、水彩画でとても印象的なピンナップが描かれていて、それで一気に惚れ込んでしまったのだった。
 余談だけど、美樹本晴彦のタッチにはめちゃくちゃ憧れた。
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