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作品を読む  永野護の衝撃



 『重戦機エルガイム』を初めて見たとき、「なんて華奢な主役ロボットなんだろう」というのが最初の印象だった。しかしその「華奢な感じ」こそが、革命的にカッコよかったわけである。

 実質的にはもっと線のメカはこれからもっと出てくるわけだが、エルガイム登場時は革命的と言えるほど線の細い、華奢な印象のメカだった。実際、それは肘や股関節のボール状構造や、膝における二重関節などの必要以上な細かさによって作られる印象だったのである。
 実際にエルガイムというのは、内部の骨格にあたる「ムーバブルフレーム」に外部の装甲をかぶせる、という構造図が描かれた上でデザインされていた。その骨格にあたるムーバブルフレーム自体は極めて脆弱で、そのムーバブルフレームの部分が外装によって覆われてない関節部が、脆弱で華奢な印象となるのである。

 この「内部骨格」と「外部装甲」によってロボットを構成するというのは、少なくとも「ダクラム」では既になされていたことであって、完全に新しかったと言えるわけではない。しかしこのムーバブルフレームのいかにも脆弱な「メカが露出してる」感は、メカデザインに新たなリアリティをもたらす一つの斬新な試みだった。
 ただしこの「内部メカが露出する」というギミック自体も、実は既になされていたことではある。エルガイムのなかで特に印象的なギミックであったのは、脚の装甲パネルが開いてブースターが現れる構造である。
 
 写真1では既に脚の装甲パネルを開いているが、これは常態ではない。この開いた状態で、その脛裏の部分にブースターがついており、ジャンプするときはいちいちこのギミックが稼動してジャンプするという懲りようが、なんとも言えずマニアックだった。
 が、この「装甲を開いてブースター出現」の先駆者がある。それは『タイムボカン』に登場した「メカブトン」である。メカブトンの場合、カブトムシの外骨格化している前翅を開いて、中からブースターの搭載した内部メカが現れるのである。これは実際のカブトムシが後翅を折りたたんで収納しているという魅惑的なギミックを、機械的にうまく表現した例だろう。

 メカブトンは大河原さんのところでも紹介したが、大河原さんの先輩にあたる中村光毅さんのデザインである。その斬新さ、意外性、魅力の素晴らしさは、何処をとっても隙がない。『タイムボカン』に出てくるドタバッタンやクワガッタンなどの他のメカも、実に素晴らしいものばかりである。
 さて話しを永野護に戻すが、永野護が実際にメカブトンやダグラムを意識してエルガイムをデザインしたとは思われない。では永野護は何処からデザインのインスパイアを受けたかと言うと、やはりそれは実際の工業製品、特にバイクの影響が強いのではないかと僕は想像する。

 バイクの構造と言うのは、ネイキッドのものは別として、その構造体に対してカウルをかぶせた「内部構造+外装」の状態になっている。またカウルの下に半分ほどエンジン部が見えるなど、外装と内部のバランスが絶妙な具合でデザインされてるものが少なくない。
 これは車においてはシャーシとボディの関係になるといえるが、車はバイクほど内部のメカを露出させる傾向がない。余談ではあるが、車におけるシャーシとボディの関係を小学生くらいの子供に浸透させたのは『ミニ4駆』ではないかと思われる。この影響がロボットアニメによるものでないのが、少しだけ残念だ。

 またエルガイムは、一部の躯体を布で覆うという、当時には存在しなかったデザイン手法も使っている。これは外骨格のなかにメカを埋め込む式の、「ガンダム」などを比べると一目瞭然で、ムーバブルフレームを一部覆う、という形式だからこそ生まれてきたデザインなのである。
 しかしこの事はデザイン上だけの意味に留まらず、「ガンダム」と「エルガイム」の間の稼動域の差というのも同時に表現しているのだ。ウエスト部や首周りを布で覆った形のエルガイムは、胴体を固定したまま首を回したり、腰を固定したまま胸を動かしたりすることができる。つまり、それだけ稼動域が実際の人間に近いのだ。

 しかし外骨格を隙間なく組み立ててるガンダムでは、腰をひねったり、首を斜め上に向けるなどのポーズは構造上取れない。しかし脆弱なムーバブルフレームに外装をつける形のエルガイムならば、そういうポーズも可能である、という事がメカデザイン上極めて衝撃的な変化だったのだ。
 この稼動関節部を布で覆う、というまとめ方は、その後もっとも日常性に接近したリアルロボットアニメである、『機動警察パトレイバー』の「レイバー」に受け継がれた。その際のデザイナーの出渕裕は、非常にうまく「エルガイム」と、『ザブングル』における「ウォーカーマシン」デザインを取り込んだと言えるだろう。

 さて永野デザインというというのは、その後の『Zガンダム』に極めて濃厚な形でデザイン的な影響を残した。特にどれを取り上げるということはしないが、「永野以前」と「永野以降」では、メカデザインに対するアプローチがグンと変わってしまったとだけは言えるだろう。
 しかしそういう周りの影響をよそに、永野は独自の「神話的」とも言えるメカデザインの世界に入りこんでいく。ここではメカデザインはもはや一つの「様式」となり、リアルさだとか実際性などは問題ではなくなる。

 その繊細なラインはさらに繊細さを加え、複雑な構造はさらに複雑へ。もはやアニメーションとしてトレースしきれないほどの、複雑で線が多く、バランスを取るのが難しい極限まで進化したメカデザインを展開しているのが、永野護の描く漫画『ファイブスターストーリー』である。写真3はそのなかに出てくる「エンゲージ」。
 その中ではメカは「モーターヘッド(電気騎士)」と呼ばれ、一つの芸術作品的価値を持つメカとして扱われている。この極限まで細かくなった永野護の独自な世界はコアなファンを持つ一方で、一般的な市場アニメにはしきれないという原理的矛盾を抱え込んだ。

 しかし漫画作品それ自体も対して進行しないのに、デザイン画集だけは発表され、またファンがそれを購入し、その独自の造形にモデラーが挑む、という不思議な世界がそこに構築されている。結果的にはそれで「永野護」というデザイナーは、現在も活躍中ということなのだ。
 またこのモーターヘッドのモデルが、どうやら結構高価なものであると同時に、作るのに神経を払うものらしい。以前に営業先の家にその一機が置いてあったので、「作るのにどれくらいかかるんですか?」と聞いたところ、「いや、これは一ヶ月くらいだよ」とか平然と応えられた。どうやら、そういうものらしい。

 好き嫌いははっきり別れるだろうが、永野護は間違いなく特異な才能を持ったデザイナーであると同時に、その仕事がメカデザイン界に残した影響もまた、少なくはないということだけははっきりしているのである。

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